蓄電池の見積もりを受け取ると、「CB-P98M06A」「HYB06A1-Z7B-P3-TRU」といった型番が並びます。カタログを見ても容量と寸法しか書いておらず、この構成が自分の家に合っているのか、金額が妥当なのかを判断できないという声をよくいただきます。
この記事では、長州産業のスマートPVマルチについて、型番の読み方・構成ごとのメーカー希望小売価格・容量の選び方を整理します。あわせて、省エネ相談室が福岡県内で施工した26件で、実際にどの容量・どの構成が選ばれているかを公開します。
価格はメーカーが公表している希望小売価格を、仕様はメーカーカタログの数値をそのまま使います。
目次
スマートPVマルチの型番の読み方

見積書に並ぶ型番は、規則に沿って付けられています。読み方が分かると、見積もりの中身がそのまま分かります。
型番は「蓄電池ユニット」と「パワコン構成」の2つに分かれる
見積書では CB-P98M06A/HYB06A1-Z7B-P3-TRU のように、スラッシュでつないだ表記になることがあります。これは2つの型番をつないだものです。
- スラッシュの前(CB-P98M06A)……蓄電池ユニットを含む機器セット。容量を表す
- スラッシュの後ろ(HYB06A1-Z7B-P3-TRU)……パワーコンディショナと周辺機器のセット。停電時に何が使えるかを決める
金額は、この2つの合計で決まります。 どちらか一方だけを見ても、見積もりの妥当性は判断できません。
「CB-P98M06A」の98は蓄電容量
前半の CB-P に続く数字が蓄電容量です。CB-P98M06A なら9.8kWh、CB-P164M06A なら16.4kWhです。
M のあとの 06A は世代を表します。ひとつ前の世代は 05A でした。中古や型落ちではなく、モデルチェンジによる違いです。
型番に「S」が入ると重塩害対応
CB-P98MS06A のように M のあとに S が入るものは、重塩害対応モデルです。パワーコンディショナも重塩害対応タイプ(PCS-RPS2A)になります。
海岸に近い場所では、この選択が必要になる場合があります。詳しくは後述します。
末尾の「TRU」が付くと停電時の出力が倍になる

パワコン側の型番で最も重要なのが、末尾の TRU です。
TRU はトランスユニット(TCS-40RP1A)を指します。これが構成に入っているかどうかで、停電時に使える電力が変わります。
| 構成 | 停電時の自立運転出力 |
|---|---|
| 単機能/ハイブリッド(トランスユニットなし) | 2.0kVA |
| ハイブリッド+トランスユニット接続時 | 4.0kVA |
出典:長州産業「Smart PV Multi」カタログ 仕様一覧(マルチ蓄電パワーコンディショナ PCS-RP2A/PCS-RPS2A)
トランスユニットの有無で、停電時に使える電力が倍違います。 さらにトランスユニットはAC202V対応なので、エアコンやIHクッキングヒーターなど200Vの機器を動かせるようになります。
見積書を比べるときは、容量だけでなく末尾まで確認してください。 同じ9.8kWhでも、停電時にできることがまったく違います。
容量のラインナップと、カタログ容量と実際に使える容量の違い
蓄電容量は3種類
現行カタログに掲載されている蓄電池ユニットは3種類です。それぞれに一般タイプと重塩害対応タイプがあります。
| パッケージ型番 | 蓄電容量 | 初期実効容量 | 蓄電池ユニット | 質量 |
|---|---|---|---|---|
| CB-P65M06A | 6.5kWh | 5.5kWh | CB-LMP65A2 | 約65kg |
| CB-P98M06A | 9.8kWh | 8.4kWh | CB-LMP98A2 | 約102kg |
| CB-P164M06A | 16.4kWh | 14.1kWh | CB-LMP164A2 | 約150kg |
出典:長州産業「Smart PV Multi」カタログ(初期実効容量はJIS C 4413による)
カタログの容量がそのまま使えるわけではない

表に「初期実効容量」という項目があります。これが実際に使える容量です。
9.8kWhのモデルで、実際に使えるのは8.4kWh。16.4kWhなら14.1kWhです(JIS C 4413による初期実効容量)。
蓄電池は、完全に空になるまで使い切ると寿命が縮みます。そのため制御上、一定量を残す設計になっています。カタログの数字より1〜2割少ないのが実際のところです。
見積もりを比べるときは、この実効容量で比べてください。 容量の数字だけを並べると、実際に使える量を取り違えます。
構成ごとのメーカー希望小売価格
スマートPVマルチは、「機器セット」と「タイプ別の必須別売品セット」を組み合わせて発注する仕組みです。つまり、2つの価格を足したものが機器の定価になります。
機器セット(蓄電池ユニット+パワコン+ゲートウェイ)
| パッケージ型番 | 容量 | タイプ | メーカー希望小売価格(税込) |
|---|---|---|---|
| CB-P65M06A | 6.5kWh | 一般 | ¥2,963,400 |
| CB-P65MS06A | 6.5kWh | 重塩害対応 | ¥3,137,200 |
| CB-P98M06A | 9.8kWh | 一般 | ¥3,602,500 |
| CB-P98MS06A | 9.8kWh | 重塩害対応 | ¥3,776,300 |
| CB-P164M06A | 16.4kWh | 一般 | ¥6,067,600 |
| CB-P164MS06A | 16.4kWh | 重塩害対応 | ¥6,241,400 |
タイプ別 必須別売品セット(停電時の使い方を決める部分)
| タイプ | 型番 | 主な構成機器 | メーカー希望小売価格(税込) |
|---|---|---|---|
| ハイブリッド・全負荷【一般】 | HYB06A1-Z7B-P3-TRU | PVユニット+トランスユニット+全負荷用分電盤 | ¥2,058,100 |
| ハイブリッド・全負荷【重塩害対応】 | HYB06A1-Z7B-P3-TRU-S | 同上(重塩害対応品) | ¥2,200,000 |
| ハイブリッド・特定負荷【一般】 | HYB06A1-T-P3 | PVユニット+特定負荷用分電盤 | ¥1,097,800 |
| ハイブリッド・特定負荷【重塩害対応】 | HYB06A1-T-P3-S | 同上(重塩害対応品) | ¥1,170,400 |
| 単機能 | KP-DB20B-2 | 特定負荷用分電盤のみ | ¥116,600 |
出典:長州産業「Smart PV Multi」カタログ セット構成およびメーカー希望小売価格
9.8kWhで構成を変えると、定価がこれだけ動く

最も選ばれている9.8kWh(CB-P98M06A・一般タイプ)で計算すると、次のようになります。
| 構成 | 計算 | 合計(税込・定価) | 約 |
|---|---|---|---|
| 9.8kWh+単機能 | 3,602,500+116,600 | ¥3,719,100 | 約372万円 |
| 9.8kWh+ハイブリッド特定負荷 | 3,602,500+1,097,800 | ¥4,700,300 | 約470万円 |
| 9.8kWh+ハイブリッド全負荷 | 3,602,500+2,058,100 | ¥5,660,600 | 約566万円 |
単機能と全負荷ハイブリッドでは、機器の定価だけで約194万円の差があります。
「他社より高い/安い」と感じたとき、その差は値引きではなく構成の違いであることが少なくありません。見積書の型番を確認すれば、どちらの構成で見積もられているかが分かります。
これに加えて、別売のケーブル・工事費がかかります
上の金額は機器の定価です。実際の見積もりには、これ以外に次のものが入ります。
- 蓄電池通信ケーブル(長さにより ¥10,890〜¥51,920)
- 主幹電流センサ・センサケーブル(¥8,800〜¥30,800)
- 据付基礎(¥15,180〜¥86,900。型番と設置方法により異なる)
- 屋外壁掛けユニット(¥55,000。CB-LMP98A2を壁掛けにする場合)
- 電気工事費、基礎工事費、運搬費など
さらに、電力計測ユニット(¥110,000)や表示ユニット(¥88,000)を追加することもできます。電力計測ユニットを入れると、既設の太陽光の発電量まで計測できます。
出典:長州産業「Smart PV Multi」カタログ 必須別売品・オプション価格
希望小売価格と実際の見積金額が違う理由
以上のとおり、同じ「9.8kWh」でも、パワコン構成・ケーブル長・基礎工事・設置方法によって金額は変わります。 見積書の合計額だけを比べても、判断はできません。
複数社の見積もりを比べるときは、次の3点を揃えてください。
- 型番が同じか……容量だけでなく、S(重塩害)の有無と末尾の TRU まで
- 工事範囲が同じか……基礎工事、分電盤、配線、既設太陽光との接続が含まれているか
- 保証の条件が同じか……機器保証の年数、容量保証の対象条件
この3点が揃っていない見積もりを金額だけで比べると、安く見えたほうが必要な工事を含んでいなかった、ということが起こります。
単機能・ハイブリッド・全負荷/特定負荷の違い
3つの設置パターンでできること
| パターン | 停電時に使える範囲 | 停電時の出力 |
|---|---|---|
| 単機能 | 特定負荷用分電盤のみ(AC100V・合計20A・2回路) | 2.0kVA |
| ハイブリッド・特定負荷 | 特定負荷用分電盤のみ(AC100V・合計20A・2回路) | 2.0kVA |
| ハイブリッド・全負荷 | 全負荷用分電盤(AC202V・75A) | 4.0kVA |
出典:長州産業「Smart PV Multi」カタログ 仕様一覧(特定負荷用分電盤 KP-DB20B-2/全負荷用分電盤 KP-DB75B)
特定負荷は、停電時に使える回路が2回路・合計20A(100V)に限られます。 冷蔵庫と照明、コンセント数か所といった選び方になります。
全負荷は家じゅうの回路が生きたままで、202V・75Aまで対応します。エアコンやIHも動かせます。そのぶん機器が増え、前述のとおり定価で約96万円の差が出ます(特定負荷ハイブリッドとの比較)。
単機能を選ぶと、全負荷は選べません
カタログ上、単機能タイプで選べるのは特定負荷用分電盤のみです。全負荷にしたい場合はハイブリッドタイプを選ぶ必要があります。
初期費用を抑えようとして単機能を選んだあとで「やはり全負荷にしたい」となると、パワコンまわりの入れ替えが必要になります。停電時に何を動かしたいかは、最初に決めておいてください。
施工実績では全負荷9件、特定負荷8件でほぼ半々
省エネ相談室が福岡県内でスマートPVマルチを施工した26件のうち、パワコンの型番まで記録が残っている17件の内訳です。
| 負荷区分 | 件数 |
|---|---|
| 全負荷(トランスユニット付き) | 9件 |
| 特定負荷 | 8件 |
ほぼ半々です。 どちらが正解ということはなく、停電時に何を動かしたいかで決まります。
判断の目安としては、エアコンを止めたくない、オール電化で給湯も動かしたいという場合は全負荷。冷蔵庫と照明、スマートフォンの充電ができれば十分という場合は特定負荷で足ります。
※残る9件はパワコンの型番が記録に残っていないため、この集計には含めていません。
福岡での施工26件のうち、17件が9.8kWh
実際に選ばれている容量

| 容量 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 9.8kWh | 17件 | 65% |
| 12.7kWh | 5件 | 19% |
| 6.5kWh | 3件 | 12% |
| 16.4kWh | 1件 | 4% |
26件中17件(65%)、およそ3件に2件が9.8kWhです。
9.8kWh(初期実効容量8.4kWh)は、一般的な戸建て住宅で夜間に使う電力をまかなえる容量帯です。極端に電気の使用量が多い、あるいはオール電化で消費が大きいといった条件がなければ、まずこの容量が候補になります。
12.7kWh以上を選んだ6件の条件
26件のうち6件は12.7kWh以上を選んでいます(12.7kWhが5件、16.4kWhが1件)。
大容量を選ぶのは、次のような場合です。
- オール電化で、給湯や空調の電力使用量が大きい
- 在宅時間が長く、日中も電気を使う
- 停電時に動かしたい機器が多い
容量は大きいほど良いというものではありません。 16.4kWhは9.8kWhに比べて定価で約246万円高くなります。使い切れない容量を入れても、その分は回収できません。ふだんの電気の使用実績をもとに決めるのが確実です。
施工実績の型番は05A世代が中心です
26件のうち21件は、ひとつ前の世代(05A)の型番です。設置時期が現行モデルの発売前だったためで、容量の考え方や構成の選び方は現行の 06A 世代と変わりません。
なお施工実績に12.7kWhが5件ありますが、これは05A世代の容量で、現行カタログには同じ容量の掲載がありません。この記事の価格表・仕様表は、すべて現行カタログの記載です。
重塩害対応モデルについて
スマートPVマルチには、重塩害対応モデル(型番に S が入るもの)が用意されています。
一般タイプとの価格差は、機器セットで約17万円(6.5kWh:¥2,963,400 → ¥3,137,200)です。パワコン側も重塩害対応品を選ぶ必要があり、そちらでも差が出ます。
設置場所の条件を先に確認してください
カタログでは、一般タイプの設置環境に海岸からの距離の条件が定められています。この条件を満たさない場所では、重塩害対応モデルを選ぶ必要があります。
福岡県は、玄界灘側にも有明海側にも海岸線があります。海の近くに設置を検討されている場合は、現地の状況を確認したうえで判断が必要です。
なお省エネ相談室でこれまでに施工した26件では、重塩害対応モデルの採用はありません。設置場所の条件によって判断が変わるため、「海の近くだから必ず重塩害対応」というものでもありません。 現地調査のうえでお伝えしています。
太陽光パネルと組み合わせるときの構成
施工26件のうち18件は太陽光と同時に設置
スマートPVマルチを施工した26件のうち、18件は太陽光発電と同時に設置しています。残る8件は、すでに太陽光がある住宅への後付けです。
同時に設置した18件の太陽光の出力は、平均6.54kWでした(最小3.4kW、最大11.39kW)。
組み合わせたパネルは長州産業CS-340B81が最多
| パネル型番 | 件数 |
|---|---|
| 長州産業 CS-340B81 | 10件 |
| 長州産業 CS-335K41H | 3件 |
| 長州産業 CS-315B61 | 3件 |
| 長州産業 CS-364B91 | 1件 |
| 長州産業 CS-284B61 | 1件 |
同じ長州産業でパネルとそろえた例が多くなっています。 メーカーをそろえると、保証の窓口が一本化されるという利点があります。
ただし、パネルとメーカーをそろえなければならないわけではありません。他社製のパネルにスマートPVマルチを組み合わせることもできます。
既設の太陽光に後付けする場合に確認すること
すでに太陽光がある住宅に蓄電池を後付けする場合、確認することがあります。
- 既設パネルのメーカーと型番……接続できるかの判定に必要です
- パワーコンディショナの設置年……交換時期が近い場合は、ハイブリッドにまとめたほうが結果的に安くなることがあります
- 設置スペース……蓄電池ユニットは9.8kWhで約102kg、16.4kWhで約150kgあります。壁掛けか自立設置かによって、必要なスペースと基礎工事が変わります
保証と補助金
機器保証と容量保証
スマートPVマルチの蓄電池ユニットは、当社の取扱スペック表では機器保証15年としています。保証の内容は時期や購入経路によって変わることがあるため、ご契約前に必ず最新の保証書でご確認ください。
保証で確認すべきなのは年数だけではありません。「何年」よりも「どの状態になったら対象になるか」のほうが実務上は重要です。容量保証であれば、初期容量の何%を下回った場合に対象となるのかを確認してください。
補助金の扱い
国や自治体の補助金では、登録された機種であることが条件になることがあります。
福岡県内の自治体補助金については、市町村ごとに実施状況が異なります。詳しくは【2026年度】福岡県の太陽光・蓄電池の補助金を市町村別に解説をご覧ください。実施していない市もあるため、お住まいの市町村を確認してから検討を進めてください。
選ぶ前に知っておきたいこと
販売する側として、良い点だけを並べるつもりはありません。検討の前に知っておいたほうがよいことを挙げます。
単機能では特定負荷しか選べない
前述のとおり、単機能タイプで選べるのは特定負荷用分電盤のみです。あとから全負荷にするには、パワコンまわりの入れ替えが必要になります。
カタログ容量と実効容量は違う
9.8kWhのモデルで実際に使えるのは8.4kWhです。「10kWhあるから1日分まかなえる」という計算をすると、想定が合わなくなります。
設置スペースと基礎工事が必要
蓄電池ユニットは9.8kWhで約102kg、16.4kWhで約150kgあります。自立設置の場合は据付基礎(¥15,180〜¥86,900)が必要です。全負荷構成ではトランスユニットと分電盤も加わるため、外壁に取り付ける機器が増えます。
現地調査のときに、どこに何を設置するかを図でお示ししています。
福岡での施工事例
省エネ相談室では、福岡県内17市町でスマートPVマルチを施工しています。北九州市5件、筑後市3件、築上郡上毛町2件、大牟田市2件、行橋市2件のほか、福岡市、古賀市、那珂川市、飯塚市、うきは市、みやま市などで実績があります。
実際の設備構成や施工の様子は、施工事例のページでご覧いただけます。
まとめ
- 型番は「蓄電池ユニット」+「パワコン構成」の2つ。 金額はこの合計で決まる
- 末尾の TRU で停電時の出力が2.0kVA→4.0kVAに倍増する。 200Vの機器も使えるようになる
- カタログ容量と実効容量は違う。 9.8kWhで実際に使えるのは8.4kWh
- 9.8kWhで構成を変えると、定価で約194万円動く(単機能¥3,719,100/全負荷ハイブリッド¥5,660,600)
- 福岡での施工26件のうち17件が9.8kWh。 全負荷と特定負荷はほぼ半々
- 単機能を選ぶと全負荷にできない。 停電時に何を動かしたいかを最初に決める
- 見積もりは型番・工事範囲・保証条件を揃えてから比べる
省エネ相談室は、販売から施工、アフターメンテナンスまでを自社で行っています。他社のお見積もりをお持ちの場合も、内容の確認からご相談をお受けしています。
この記事で使ったデータについて
- 価格・仕様・型番は、長州産業「Smart PV Multi」カタログの記載に基づきます。メーカー希望小売価格は税込です。実際の販売価格ではありません
- 施工実績(26件の容量・負荷区分・エリア・組み合わせたパネル)は、省エネ相談室が福岡県内で施工した実績データから集計したものです(2026年9月時点)
- 個人が特定される情報は記載していません