先に結論をお伝えします。蓄電池は、現在の価格では投資回収を目的に買う設備ではありません。
公的データで計算すると、回収には25年〜64年かかります。機器保証は10年か15年です。今の価格では、保証期間内には回収できません。
省エネ相談室は蓄電池を販売している会社です。これを書くのは商売上不利ですが、計算した結果がそうなので、そのままお伝えします。
そのうえで蓄電池に価値がある場面と、どういう条件なら数字が改善するかもお伝えします。
目次
結論|夜にどれだけ使うかで25年〜64年
回収年数を決めるのは「夜の使用量」です
蓄電池の効果は「昼に余った電気を貯めて夜に使う」ことで生まれます。つまり夜に使う量が上限になります。
9.84kWhの蓄電池(省エネ相談室が施工事例として掲載している福岡県内の併用90件の平均容量)で計算します。
| 夜の使用量 | 年間の放電量 | 年間の効果 | 回収年数 |
|---|---|---|---|
| 5kWh/日 | 約1,642kWh | 3.4万円 | 50〜64年 |
| 7kWh/日 | 約2,300kWh | 4.7万円 | 36〜46年 |
| 9.84kWh/日(容量いっぱい) | 約3,232kWh | 6.6万円 | 25〜33年 |
費用は167〜216万円(設備費15〜20万円/kWh+工事費2万円/kWh、経済産業省の資料より)で計算しています。
一般的なご家庭の夜の使用量は5〜7kWh程度です。つまり現実的な回収年数は36〜64年ということになります。
計算の根拠
| 項目 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 自家消費の便益 | 27.45円/kWh | 経産省 調達価格等算定委員会 |
| 卒FIT売電単価(九州電力) | 7.00円/kWh | 九州電力 |
| 1kWhあたりの改善幅 | 20.45円 | 27.45 − 7.00 |
| 蓄電池の費用 | 17〜22万円/kWh | 経産省 定置用蓄電システム普及拡大検討会 |
※27.45円/kWhは、2026年度の調達価格の算定に使う想定値(大手電力の家庭用電気料金単価の10年平均+消費税)で、各家庭の実際の単価ではありません。
年間の放電量は「表の夜の使用量(1日あたり)×365日×90%」で計算しています(放電深度や充放電のロスをまとめて1割と見込んだ値です。例:5kWh×365日×90%=約1,642kWh)。放電深度90%と充放電効率90%を別々にかけると、容量いっぱいの行は年間約2,909kWhになり、回収は28〜36年に延びます。
なぜこんなに長くなるのか
今の価格のままでは、蓄電池は機器保証の期間内には元が取れません。理由は、蓄電池が生む価値が1kWhあたりで見ると小さいことにあります。

改善できるのは1kWhあたり20.45円だけ
蓄電池が生む価値は「7.00円で売るはずだった電気を、27.45円の価値で使う」という差額です。
その差は20.45円/kWh。仮に毎日10kWhを回せても(ロスを見込まずに計算しても)、1日205円、年間で7.5万円です。
167〜216万円をこの金額で回収するには、20年以上かかります。これは営業の話ではなく、割り算の結果です。
容量を大きくしても回収年数は変わりません
ここは誤解されやすい点です。
容量を増やせば年間の効果も増えますが、費用も比例して増えます。1kWhあたりの単価が同じなら、回収年数は変わりません。
むしろ夜の使用量を超える容量を入れると、使い切れないぶん回収が遅くなります。容量の決め方は家庭用蓄電池の容量の目安は何kWh?でご説明しています。
太陽光がない場合はさらに厳しくなります
太陽光を設置していない場合、夜間電力を貯めて昼に使うことになります。この差額は10〜20円/kWh程度です。夜に7kWh使うご家庭で、上と同じ「×365日×90%」(年間約2,300kWh)で計算すると次のとおりです。
| 昼夜の単価差 | 年間の効果 | 回収年数 |
|---|---|---|
| 10円/kWh | 2.3万円 | 73〜94年 |
| 15円/kWh | 3.4万円 | 48〜63年 |
| 20円/kWh | 4.6万円 | 36〜47年 |
太陽光なしで蓄電池だけ、という構成は経済的にはおすすめできません。詳しくは蓄電池はやめたほうがいい?見送るべき5つの条件をご覧ください。
それでも蓄電池に価値がある3つの場面
回収できないなら意味がないのか。そうとは言えません。ただし「投資」ではない理由で選ぶことになります。
1. 太陽光側の回収を早める
これが最も金額で説明しやすい価値です。
2026年度のFIT単価は24円/kWh(1〜4年目)→8.3円/kWh(5〜10年目)の二段階になりました。5年目から売電単価が3分の1に落ちます。
この時期に蓄電池で自家消費率を上げると、太陽光側の回収が大きく変わります。
| 自家消費率 | 太陽光の回収 | |
|---|---|---|
| 太陽光のみ | 35.2%(全国平均) | 22年 |
| 蓄電池あり | 70%まで上がった場合 | 14年 |
太陽光側で8年短縮できます。詳しい計算は太陽光発電は何年で元が取れる?に載せています。
ただし合算で見ると話が変わります。正直にお伝えします。
| 構成 | 費用 | 回収年数 |
|---|---|---|
| 太陽光6.1kWのみ | 約184万円 | 22年 |
| 太陽光6.1kW+蓄電池9.8kWh | 約350〜399万円 | 28〜32年 |
施工事例として掲載している福岡県内の併用90件の平均構成(太陽光6.1kW+蓄電池9.8kWh)で、太陽光30.1万円/kW(既築・2025年設置の平均。経済産業省 調達価格等算定委員会、2026年1月)、蓄電池17〜22万円/kWhとして計算しています。太陽光のみは自家消費35.2%(2025年1〜8月の全国平均の実績。ダブル発電〈エネファームなどとの併設〉を除く)、蓄電池ありは70%の場合です。
合算の回収年数は、太陽光だけより長くなります。「蓄電池を入れれば得になる」という説明は、この点を伏せています。
2. 停電時に電気が使える
これは金額で測れない価値です。
太陽光だけでは日中しか使えません。蓄電池があれば夜も使えます。在宅医療機器をお使いのご家庭など、停電が生活に直結する場合は、経済性とは別の判断になります。
全負荷型(家中使える)と特定負荷型(決めた回路だけ)の違いは蓄電池のメーカー比較でご説明しています。取扱44型番のうち、全負荷と特定負荷を選べるのは22型番です。
3. 電気代の値上げに対する備えになる
自家消費の割合が高いほど、電気代が上がったときの影響を受けにくくなります。
逆に言えば、電気代が上がるほど蓄電池の回収は早まります。上の計算は自家消費の価値を27.45円/kWhとしていますが、これが35円になれば改善幅は28円/kWhになり、回収年数は約3割縮みます。
ただしこれは「電気代が上がる」という予想に賭けることになります。確実な話ではありません。
数字が改善する条件
補助金の額次第で大きく変わります
ここが実務上いちばん効きます。
福岡県内の市町村には独自の補助制度があります(実施していない市町村もあります)。国の制度と併用できる場合もあります。
仮に30万円の補助が出れば、実質負担は137〜186万円。夜に7kWh使うご家庭なら29〜40年になります。それでも長いのが実情です。
お住まいの地域の状況は【2026年度】福岡県の太陽光・蓄電池の補助金を市町村別に解説でご確認ください。
国は目標価格7万円/kWhを掲げています
これも正直にお伝えします。
経済産業省は家庭用蓄電池の目標価格を7万円/kWh(工事費込み・税抜)としています。もしこれが実現すれば、9.84kWhで約69万円。夜に9.84kWh使うご家庭なら回収は約10年になります(約69万円÷年6.6万円)。
| 1kWhあたり | 9.84kWhの費用 | |
|---|---|---|
| 現在(補助なし) | 17〜22万円 | 167〜216万円 |
| 国の目標 | 7万円 | 約69万円 |
つまり「待てば改善する可能性はある」というのは事実です。ただし達成の保証はなく、待つ間の電気代と補助金の変動も考慮が必要です。価格の詳細は蓄電池の価格・費用相場でご説明しています。
卒FITを迎えている方は「待つコスト」が大きい
すでに卒FITの方は、売電単価7.00円で電気を売り続けています。本来27.45円の価値がある電気を、7.00円で手放している状態です。
年間5,000kWhを売電しているなら、その差は年間約10万円分。待つほどこの分が積み上がります。
ただしそれでも蓄電池の費用167〜216万円を回収するには20年以上かかるという結論は変わりません。ここは冷静に見る必要があります。卒FIT後の選択肢は卒FIT後の選択肢で整理しています。
元が取りやすい家庭・取りにくい家庭
ここまでの計算を、ご家庭の条件ごとに並べ直します。回収年数を左右するのは、主に次の6つです。
| 条件 | 元が取りやすい | 元が取りにくい |
|---|---|---|
| 夜の使用量 | 多い(蓄電池の容量を毎日使い切れる) | 少ない(5kWh/日以下) |
| 太陽光 | ある | ない |
| 売電の状況 | 卒FITを迎えている(売電7.00円) | FITの期間がまだ長く残っている |
| 補助金 | お住まいの市町村に補助制度がある | 補助制度がない |
| 容量の選び方 | 夜の使用量に合わせている | 夜の使用量を超える容量を入れている |
| 住む年数 | 長く住み続ける予定 | 数年以内に転居・建て替えの予定 |
数字で比べると、差ははっきりしています。9.84kWhの蓄電池で、夜に容量いっぱいまで使うご家庭は25〜33年、夜の使用量が5kWhのご家庭は50〜64年です。太陽光がなく、夜間電力を貯めて使う場合は、夜に7kWh使うご家庭でも36〜94年になります。補助金が30万円出れば、夜に7kWh使うご家庭で36〜46年が29〜40年に縮みます。
FITの期間中は売電単価が高いため、貯めて使うより売ったほうが得な時期があります。数年以内に転居や建て替えの予定がある場合は、回収の途中で設備を手放すことになります。
補助金がない場合、左側の条件がそろったご家庭でも計算上の回収は25年以上です。補助金を引いても、機器保証の10年か15年よりは長くなります。「元が取りやすい」とは、ほかのご家庭より回収が短いという意味で、保証期間内に回収できるという意味ではありません。
右側に多く当てはまる場合は、今は見送るのも正しい判断です。見送ったほうがよい条件は蓄電池はやめたほうがいい?見送るべき5つの条件で詳しくご説明しています。
よくある質問
蓄電池は何年で元が取れますか?
公的データで計算すると夜の使用量次第で25年〜64年です。一般的なご家庭(夜5〜7kWh)なら36〜64年。機器保証は10年か15年なので、今の価格では保証期間内に回収できません。補助金30万円が出ても29〜40年です。
元が取れないのに、なぜ売っているのですか?
停電対策としての価値、電気代上昇への備え、太陽光側の回収を早める効果があるためです。ただしこれらは「投資として回収できる」という話とは別です。混同して説明されると判断を誤るので、分けてお伝えしています。回収を目的にされている方には、そうお伝えします。
営業の人は「10年で元が取れる」と言っていました
根拠を聞いてください。1kWhあたりの改善幅(自家消費27.45円 − 売電7.00円=20.45円)と、年間の放電量を示してもらえば、ご自身で検算できます。今の価格で10年で回収するには、安いほうの167万円でも、10年で割ると年16.7万円の効果が必要です。それには年間8,000kWh以上の放電が必要になり、9.84kWhの蓄電池では物理的に届きません。
容量を大きくすれば早く回収できますか?
いいえ。費用も比例して増えるため、回収年数はほぼ変わりません。むしろ夜の使用量を超える容量を入れると、使い切れず回収が遅くなります。容量は夜の使用量から決めるのが正解です。
太陽光と一緒に入れると得になりますか?
太陽光側の回収は22年→14年に短縮できますが、合算の回収年数は28〜32年で、太陽光だけ(22年)より長くなります。同時設置ならハイブリッド型パワコン1台で済むため費用は抑えられますが、総額が増える事実は変わりません。
それでも入れたほうがよいのはどんな家庭ですか?
停電が生活に影響する事情がある方、夜に電気を多く使う方(オール電化など)、お住まいの市町村に手厚い補助金がある方です。お金の面で元が取りやすい条件・取りにくい条件は、上の「元が取りやすい家庭・取りにくい家庭」にまとめています。
ご自宅の数字を出します
この記事の計算は公的な参照値と一般的な使用パターンです。ご自宅の実際の数字は検針票を見れば計算できます。
省エネ相談室では次のところまでお出しします。
- ご家庭の夜間の使用量(検針票と生活パターンから)
- それに合う容量と、設置できる型番
- 補助金を引いた後の実質負担額
- その条件での回収年数(隠さずお見せします)
「回収目的なら見送ったほうがよい」という結論になれば、そうお伝えします。そのうえで停電対策としての価値をどう評価されるかは、ご家庭の判断です。
まとめ
- 回収は夜の使用量次第で25年〜64年。一般的なご家庭なら36〜64年
- 機器保証は10年か15年。今の価格では保証期間内に回収できない
- 改善できるのは1kWhあたり20.45円だけ(自家消費27.45円 − 卒FIT売電7.00円)
- 容量を大きくしても回収年数は変わらない。使い切れない容量は逆効果
- 太陽光なしなら36〜94年(夜に7kWh使う場合)。経済的には成立しない
- 太陽光側の回収は22年→14年に短縮できるが、合算では28〜32年で太陽光だけより長い
- 補助金30万円で29〜40年。国の目標価格7万円/kWhが実現すれば約10年
- 元が取りやすいのは、夜に多く使う・太陽光がある・卒FIT済み・補助金がある家庭。それでも補助金がなければ計算上25年以上、補助金を引いても機器保証の期間よりは長い
- 選ぶ理由は停電対策・電気代上昇への備え。投資回収ではない
蓄電池は、金額だけで見れば割の合わない設備です。それでも「停電時に電気が使えること」に価値を感じるご家庭には意味があります。
大事なのは、その2つを混ぜずに判断することだと考えています。数字はお見せしますので、ご自身の基準で決めてください。